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「ニーベルングの指環」の第9回〜カイルベルト/バイロイト('52年)〜です。 55年盤もそろえましたが、こちらは買って日が浅いこともあるので、もうちょっと聴き込んでからにするとして、とりあえず、今回で指環感想は最終回としておきます。 1.前置き このカイルベルト(52)盤もクラウス盤と同様、当初はあまり買う気がなかったです。しかし、たまたまインターネット上で試聴してみたら結構よかったので、勢いで注文してしまいました。 まさか1950年代の録音に次々と手を出す事になるとは我ながら予想していなかったですね。 録音はよくないが、もうクナ盤・クラウス盤に慣れていればそんなに悪いとは思わない(笑)のですが、それらよりは音がこもってますね。フルベン/スカラよりはいいですが。 2.「ラインの黄金」 クラウス盤同様、ナイトリンガーが若々しいです。歌も良いが演技も素晴らしく、指環を奪い去って逃げていくところの笑い声などリアリティがあってよいです。 ヴォータンのヘルマン・ウーデも好演だが、巨人族兄弟(ヴェーバーのファゾルト・グラインドルのファーフナー)がなかなかよかったです。 特に、ヴェーバーは今までフンディングやハーゲン役を聴いたときは大して感心しなかったのですが、このファゾルトは貫禄があって良いです。 フローが妙に若々しくて凄いな、と思ったら、ヴィントガッセンだった。 ヴィッテのローゲも元気があって良い。カイルベルトのバックもうまいです。 ローゲの歌を躍動感溢れる音楽で支えています。 クラウス盤もカイルベルト盤も意外とラインの黄金が良いので驚きました。 3.「ワルキューレ」 1幕最初の前奏曲から結構荒々しい嵐の音楽ですが、音がこもり気味なのが惜しい。 トレプトウのジークムントは声や歌い方が軽薄な感じでちょっとがっくりきますね。なんだか、人間的に随分小物に聴こえてしまう(笑)。 フルベン盤ではそんなにわるくなかったのになあ・・・ ボルクのジークリンデとグラインドルのフンディングは素晴らしいです。 カイルベルトの演奏も手堅くつけていますが、中でも1幕最後の加速は凄まじいです。ロマン的な激情的な煽り。多分(フルベンを含めても)どの演奏よりもこの煽りは凄いです。フルヴェンのバイロイト第九の最後を彷彿とさせます。 ホッターもヴァルナイもクラウス盤と同様、声も若々しいが演技も生々しくていい。 第2幕のモノローグのところや、3幕最後のブリュンヒルデがヴォータンに自分のまわりに炎をはりめぐらすことを願うところ、告別と魔の炎の音楽など、ドラマチックなこと、この上ないです。 4.「ジークフリート」 ホッターの声が若々しい。キューンはクラウスやクナ盤に比べるとまだ聴きやすいか? アルデンホフの声はヴィントガッセンに慣れているせいか、ジークフリートにはちょっとくどめに聴こえて若者という感じではない。しかし、なかなかの芸達者だし、フレーズをまじめに歌い上げていく感じで、歌として聴く分にはうまいし、おもしろい。 ナイトリンガーのアルベリッヒはクラウス盤同様若々しくていいです。ホッターやナイトリンガーは後年の方が歌いまわしにうまさがあるが、歌の迫力・勢いとしての全盛期は50年代初めと思います。 3幕のアルデンホフとヴァルナイの二重唱も凄い。アルデンホフはヴィントガッセンのような天衣無縫な若々しさはないが、男性的な逞しさがある。個人的な声の好みはやっぱりヴィントガッセンだが、ここでのアルデンホフはなかなかよい。ヴァルナイも後年のような音を引きずるような傾向はなくストレートに表現していきます。 カイルベルトの指揮はやはり職人的なうまさがあります。歌にうまくつけてるし、盛り上がりの煽り方もさすがと思います。 5.「神々の黄昏」 ヴァルナイ・グラインドルが若々しい。特にヴァルナイは全幕にわたって素晴らしい歌を繰り広げています。 ロレンツのジークフリートが意外とまとも(笑)。フルベン/スカラのは何か歌いまわしがわざとらしく、クセがあるというか、演技がかりすぎていて、いまひとつ好きになれなかった。 この盤も基本的には歌い方は変ってはいないのだが、フルベン盤より素直に歌っていて良い。 録音状態が、2幕が音がこもり気味。それ以外は他の楽劇と同レベル。 カイルベルトの指揮も相変わらずうまい。ジークフリートの葬送のところとか金管も生々しく、自己犠牲以降の最後のまとめ方も実にドラマチックに盛り上げています。 6.まとめ カイルベルトは節回し・歌いまわしが実にうまい。 それでいて、堅実に音楽を構築して進めており、それが好感持てる。堅実とか、質実剛健という意味ではベーム盤に近いが、それよりももっとオペラ職人的というか、ドイツ・オペラ演奏の真髄みたいなものがうかがえます。 ベームは愚直にテンポをグイグイ進めていく感じだが、カイルベルトはがちっとしている上に、曲想に応じてテンポを変化させてうまくつけているし、こじんまりとうまくまとめているな、と感心させられます。 クラウスもオペラのツボみたいなのをうまく表現してるのですが、どちらかというと粋で聴かせ上手な雰囲気があり、ワーグナー的でないと言えばそうかもしれないですね。カイルベルトはドイツ人気質の堅実さとロマン的な要素をうまく融合した形で、スケールは大きくないですが、ワーグナー演奏としてのある意味スタンダード的な演奏と思います。 また、クナの指揮は結構手を抜いていたりする所とかムラがあるのですが、カイルベルトの指揮に関して言えば、全曲通してあまりここはダメというところがない。平均的にうまくまとめているのが凄いです。 逆に、聴き終えて感動するという演奏ではないんですよねえ(そこはベーム盤にも通じるかもしれないですが)。 この演奏、ドイツ人は多分、こういう演奏のほうが普通にしっくりきていたんじゃないかと想像してしまいます。だから、逆にクナの尋常じゃない巨大さが特異な個性になっててうけてたのかなあとも思います。 カイルベルトのような演奏は取り立ててイチオシするような人はあまりいないかもしれません。 その一方で、バイロイト含めて最近「本物」と思えるワーグナー演奏がほとんどない中で、上記のような特徴でしかも1950年代の凄い歌手達が歌っている点、貴重な記録と思います。 録音の関係もあり、そう頻繁には聴かないとは思いますが。 55年のステレオ録音も買ってしまったのですが、そちらの方は頻繁に聴いてます。 こちらの感想はまたいつか。 次の<PA-010>は指環感想のまとめです。 Wagner: Der Ring des Nibelungen
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