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さて、「トリスタンとイゾルデ」全曲の感想、(その2)はベーム/バイロイト('66年)です。 1.全体です。 ベームは、バイロイトで同時期に指環も振っていてそれに通じるものがありますが、とにかくテンポが速く、ぐいぐい引っぱっていく演奏です。非常に勢いのある、緊張感に富んだ音楽になっていて、引き締まった筋肉質な音楽になっています。 オケが爆発する時の迫力はベルリンフィルが演奏しているかのような素晴らしさ。聴いていてカタルシスを感じることができます。 その一方で、音の響きとしての厚みはあるのですが、テンポが速いせいもあり、音楽全体として腹にこたえるようなスケールの大きい重厚さはあまり感じられないです。 また、官能的な音楽に陶酔したい向きには抵抗感があるかもしれません。 実は、「トリスタンとイゾルデ」にこういう表現はどうなのかなあ?と少々疑問もあります。やっぱり、官能的な表現や重低音の効いた重い響き、スケール感のある演奏を聴きたいのなら、フルトヴェングラーの方がお薦めですね。 まあでも演奏自体は上記のとおりで、官能的ではないにしても曲想が盛り上がる部分とかはなかなか劇的に作られており、逆にこの演奏だけ持っていたら、これはこれで満足できるでしょう。このような推進力と緊張感を持った演奏は滅多にないです。 2.ヴィントガッセン(トリスタン) 歌手はトリスタンのヴィントガッセンが圧倒的に良いです。 このヴィントガッセンを聴いたとき、「これこそトリスタン!」と思いました。声そのものの魅力、若々しさと力強さ、若者としての表現力等、トリスタンの声・歌そのものの名演を選べと言われたら、この盤です。 このときのヴィントガッセン自身は結構な年令であったとは思うのですが(笑)、たいした表現力です。 その一方で第3幕とか聴いてると、死にそうになってる人間がこんなに元気な声で歌ってるのもどうかと思いますが(笑)。 また、人間的に大人というか、知性の必要な役柄でもあると思うのですが、ヴィントガッセンは若さ一本槍で突き進むような部分もあるので、どちらかというとジークフリート的なトリスタンになっちゃってるような気はします。まあ、そこはあんまり小難しく考えないで、ただ単に声の魅力を堪能して満足しています。 3.ニルソン(イゾルデ) イゾルデのニルソンも素晴らしいですね。 個人的に、ニルソンは指環のブリュンヒルデでは、凄いと思いつつも個人的な好みと言う点で今ひとつと言う感じで結構こきおろしていました(笑)。 しかし、この「トリスタンとイゾルデ」の演奏聴いてみると、どちらかというと役との相性も大きいな、とも思うようになりました。 うぐいすは、ニルソンはイゾルデ役の方がブリュンヒルデ役より合ってるなあと思います。 深みはなくても声のパワーが凄い分、若々しさが全面に出ており、この盤では結構楽しめました。 4.他の歌手について クルヴェナールのヴェヒターはフルトヴェングラー盤のフィッシャー=ディースカウを聴いた後では少々物足りなく思えてしまいますが、なかなかの熱演です。 ブランゲーネのルートヴィッヒも手堅くまとめています。 タルヴェラのマルケ王ですが、マルケ王の歌はあまり聴くことがないので、まあこんなものなのかなあ、というところです。声の魅力はグラインドルの方が上のようには思います。 5.まとめ あまりにも劇的で緊張感のある表現なため、もうちょっと官能的でもいいんじゃないの? とかネガティブな表現も入ってしまいましたが、それでも名演には違いないです。 あくまで好みの問題だと思いますし、実際うぐいすも時々取り出して音の迫力に圧倒されながら聴いています。嫌いな演奏ではありません。 さて、次回は同じく「トリスタンとイゾルデ」全曲で、C.クライバー/ドレスデン盤の予定です。 最近急に忙しくなってしまったので、書くのはいつになるかなあ・・・ ワーグナー : 楽劇<トリスタンとイゾルデ> (全曲)
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