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さて、それでは最初のパーキングエリア<PA-001>、「ニーベルングの指環」〜ショルティ/ウィーンフィル〜です。 1.まずは全体です。 全体通して、ショルティのリズム・テンポ感覚が徹底していると思います。 賛否両論あるけどいろいろな「効果音」や「合成」的な音は、個人的には結構わかりやすくて好きだが、これに慣れちゃうと他の演奏が物足らなく思えるときがあるかも(笑)。 2.感心した歌手陣 ショルティ盤の歌手は確かに凄いです。50〜60年代のバイロイトを除けば、こんなメンバーはなかなか揃えられなかったのではないでしょうか。 初めて聴いた時、個人的に一番凄く思ったのはホッターとフリックですね。 ホッターのヴォータンは、これ聴いちゃうともう他の人のヴォータンはいまいちだなあと思ってしまいます。 ヴォータンが怒ったり(ワルキューレ3幕)、笑ったり(ジークフリート1幕)してるだけでも聞き惚れてしまうのです。(笑い声にすら聴き入ってしまう。) ただし、50年代の演奏をよく聴くようになると、この盤ではもう声が衰えてるのがわかるようになりましたけどね。声の威力というか、覇気が違うというのか・・・ 演技や歌の気迫はなくなっていますが、それでもやっぱりホッターですから、他の歌手とは違うのです。ステレオで聴けるホッターのヴォータンはこれとカイルベルト'55年盤だけですし、その意味でも貴重な録音ですね。 フリックの悪辣な表現のハーゲンも強烈です。悪役もここまで徹されるとほれぼれしてしまう。 他と比較すると、例えば1950年代のグラインドルは貫禄があって朗々と歌い上げる歌(声)そのものに惹きつけられますが、フリックはどちらかというとキャラクター(演技?)で聴かせる感じです。 (う〜ん、でもやっぱりグラインドルの方が聴き入ってしまうかなあ。声の凄みがちがうもんなあ) 3.他の歌手について ニルソンのブリュンヒルデも好調で不安定なところが全然ないです。ただ、下にもちょっと書きましたが、大砲のように高音突き抜けてくる割に淡白な感じなので、感情移入できないところも・・・ 単なる好みの問題でしょうね。 ナイトリンガーもいいです。なんというか、若々しいアルベリッヒで、荒々しさもあり、野性的で魅力のある声です。この人の声の張りというか、どこかピンとした芯のある声(うまく表現できん)には惚れ惚れしてしまいます。 ヴィントガッセンとシュトルツェについてはまた別項で述べます。 5.「ワルキューレ」 第1幕は意外と耽美的にやってるのだが、逆にちょっとだれてしまいました。さすがに最後の追い込み方は凄いけど。クレスパンとキングのコンビはばっちりキャラクターにあってますね。 特にキングはベーム盤も含めて、最高のジークムントじゃないでしょうか。 2幕も同様。ホッターの歌うヴォータンのモノローグは50年代のような生々しさはなく、枯れた雰囲気があります。ショルティの指揮は、音の迫力はあるのですが、何か今ひとつ迫ってくる感じがないです。 その一方、第3幕は冒頭遅めのテンポで迫力全開のワルキューレ達の歌声には圧倒されます。 ワルキューレの騎行はショルティ盤が一番好きですね。 ホッターのヴォータンが怒りまくるところも金管がバリバリ鳴らしてたり、音だけで聴いてててもフレージングやダイナミクスをオーバーにしてるので、初めて聴く時はわかりやすくておもしろかったです。 その一方で、ちょっと疲れてるときなんか体にこたえるときもあります。耽美的なところからいきなりギクシャクしたリズムでバリバリと鳴らされるのがなんとも・・・ 6.「ジークフリート」 1幕は何回でも聴きたいと思いますね(疲れるけど)。面白い。 ヴィントガッセンのジークフリートも溌剌としてていい(バックがショルティなので、この人特有の走り癖が気にならない)が、それ以上にシュトルツェのミーメがいいですねえ。このくせ者的な表現が。 ふいごで熱風送って、粉になったノートゥングを溶かすところは意外と遅めにじっくりやってますね。 ヴィントガッセンがよく走らなかったですね〜。 そのかわり鍛冶のトンテンカンテンやるところの速いこと。ミーメのシュトルツェなんか早口言葉やってる感じです。ご苦労様です。 2幕も1幕ほどでないが結構楽しめます。ところが、3幕後半のブリュンヒルデが目覚めるところ以降がどうにも薄味になってしまうのが残念。 ショルティが少し耽美的にやろうとしてるのと、ニルソンが抑え目に歌っているのが逆効果になってしまっているような気がします。ニルソンは威力がなくなると淡白に聴こえてしまう。 7.「神々の黄昏」 ショルティのイメージからして、終始早めのテンポで筋肉質な曲想でいくのかと想像していたけど、意外と遅めのテンポのところもあるし、耽美的なところも多かったりしました。 (ジークフリートの葬送行進曲・ブリュンヒルデの自己犠牲とか) でもそういうところはだれました。このへんは自然なベームやスケールの大きいクナの方が好き。 逆に、「黄昏」の序幕(ジークフリートとブリュンヒルデのかけあい部分)のところはあっさりしすぎ。 (ここはやっぱりクナ/ヴァルナイ/ヴィントガッセンが最高です。) 8.全体的な指揮/オケの音 ウィーンフィルのせいなのかわからないが、オケの音に厚みがない・・・ ウィーンフィルって元々、重厚さというよりも音楽的なセンス(優美さ?)で聴かせる団体というのもあるのかなあ。(指揮者によっては結構重厚になったりもするんですがね) でもそれはそれで、こんなのもありかなと納得したりもしてますが(笑) あと、リズムがやっぱり特殊な感じがしますね。聴いてるとちょっと身構えてしまう。 逆にそれが生き生きとして聴こえるのが「ジークフリート」1幕。 でも、「ワルキューレ」「神々の黄昏」だと、ショルティのリズムがちょっとくどく感じてしまいます。 (ショルティ特有の「ギクシャクギクシャク」した、フレーズの抑揚が極端なのが続くので) 特に「黄昏」は後半の、筋がドロドロになっていくところ(2幕後半以降)は「もういいよ」って気分になってしまった。 10.まとめ 「指環」を初めて聴いたのはショルティ盤。結果的にそれは正しかったと思う。わかりやすかった。 でも「ラインの黄金」をあまり聴かなくなった遠因はこのショルティ盤かも。 ヴォータンがジョージ・ロンドンなんだよね〜とか、あとショルティ流のリズムではなく、もっと自然なフレーズの流れやテンポ感の方がこの楽劇には合うような気もする・・・ まあ、そうは言っても全体的に考えるとそれなりに聴かせどころのツボは押えているので、人によってはこれだけで満足できると思う。 ワーグナーにあまり深入りするつもりがなくて、この作品をそれなりに味わえればいいや、という人には、わかりやすくて絶好の演奏だと思う。 逆に、他の演奏はどうかと興味を持ったとき、そのリファレンスにもなりえるのではないでしょうか。 このセットが常に推薦盤としてあがってくるのがわかる気がします。 でも、他の演奏も知ってしまった今となっては、この演奏を聴き込もうという気にはならないのですがね。やっぱり入門編としての演奏かなあ。 この次のセットを買おうとするかしないかがワグネリアンになるかならないかの分かれ道かもしれないですね。(といいつつ、うぐいす自身はワグネリアンじゃないよなあ) さて、次のPAは「<PA-002>ベーム/バイロイト」の予定です。 Wagner: Der Ring des Nibelungen
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