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「ニーベルングの指環」の第4回〜クナッパーツブッシュ/バイロイト('58)〜です。 1.まずは全体です。 テンポ遅めなことや音がモノラルで古いことと、バイロイト特有の、オーケストラの音がダイレクトに伝わってこない感じも手伝って、音による物理的なカタルシスはないですね。 その代わり、クナの雄大なテンポ・スケールを味わうことができます。 音が古いと書きましたが、確かにショルティ等のステレオ盤に比べてしまうと違うのは当然。 でも、そんなにひどくないですよ。モノラル録音の類の中では音のよい方になると思います。 世間一般でも言われてますが、私が購入した1958年のGolden Melodram盤は音がいいらしく、実際に聴いてみても臨場感が感じられ、あまり違和感なく聴けます。 (海賊盤らしいですけどね) 2.印象に残ったところ この盤はとにかくクナッパーツブッシュの雄大な指揮とヴァルナイの壮絶な歌に尽きますね。 ヴァルナイの歌い方にちょっとクセ(音程を下から上へずりあげるような歌い方)はありますが、ニルソンのような直線的な高音の威力ではなく、女らしい色気というか、声に人間的な暖かさを感じます。 これ聴いた後にニルソン聴くと随分あっさりして聴こえます。逆にヴァルナイの声は聴く時によってはくどいかもしれないですが。 ヴィントガッセンはクナの遅いテンポについていけてなくて走るところ(たとえば「ジークフリート」1幕の最後の、剣を鍛えながら歌うとこ)があるのが非常に残念です。でも、声は相変わらず若々しく魅力的です。 やっぱりナイトリンガーのアルベリッヒじゃないのも結構残念。アルベリッヒの歌はそのものの魅力というより、ナイトリンガーに魅力があって聴いてた、というところが多いので。 シュトルツェのミーメは意外としっかり歌っていてびっくり(笑)。悪くはないですが、後年のようなもうちょっとやさぐれてる歌い方のほうが好きだったりします。 ホッターは意外とショルティ盤でも満足してましたが、やっぱりクナ盤の方が歌や声そのものの迫力が凄いです。 (後に'50年代前半のバイロイト実況で、もっとすごいホッターを聴く事になりますが。) 3.「ワルキューレ」 重厚壮大とはこういう演奏を言うのでしょうね。冒頭の嵐の音楽から非常に重々しくはじまります。 ヴィッカーズとリザネクのコンビは悪くないです。ヴィッカーズはカラヤン盤、リザネクはベーム盤でもう知ってますが、おおむね同じ印象です。でもなんと言ってもグラインドルのフンディングですね。この声の風格・貫禄。なんとおそろしげな家主でしょうか。 ホッターの演技も凄いです。いちいち数え上げられないですが、例えば2幕最後のフンディングにはき捨てるような静音で「行け(Geh!)」と言う場面にはゾクっとしました。 (ショルティ盤のホッターは諦観のあるささやき方で、それもいいですが) ホッター以外の歌手は一喝するような表現が多いので、逆にホッターのような表現は背筋が凍る思いになってしまいます。 2幕のヴォータンのモノローグはホッターが生々しい演技で圧倒的に素晴らしいです。56年盤よりはかなりおもしろいです。やっぱりオケが少々引っ込み気味なのが残念。 3幕冒頭のワルキューレ達の歌がいまいちだったり、ヴォータンが登場するところや最後の「告別と魔の炎の音楽」に突入するあたりが迫力不足な気はします。まあ、あんまり気分が前のめりじゃない時に聴くと、クナの壮大な演奏に身を委ねる感じになれますので、そういうときはあまり気にはならないですかね。 その一方で、ヴォータンがブリュンヒルデに罰を言い渡すところから、ブリュンヒルデ以外のヴァルキューレ達が逃げていくところなんて、音もそんなによくないのに、なぜかここはクナ盤が最も凄絶な印象がありました。ホッターの凄さと、オケの音が、録音そのものはよくなくても、重低音の下支えが必ずあることも一因なのかと。 4.「ジークフリート」 シュトルツェとヴィントガッセンのコンビはいいですね。声そのものに魅力があります。 クナの遅さについていくのが大変そうですが力演です。ホッターも威厳のある歌を発揮しています。 それにしてもクナのテンポ感、壮大さは凄いです。例えば1幕最後の鍛冶でトンテンカンテンやるとこの遅さといったら、たとえようのないスケールの大きさ。 なんというか、剣を作ってるというより、井戸のボーリング調査でもしてるんじゃないかという迫力です(笑)。 通常早めのテンポで喜劇的な側面を強調する部分だったりするんですが、このクナ盤では音楽ドラマを感じてしまいます。 ヴァルナイもいいです。3幕最後の、ブリュンヒルデが眠りから覚めて以降のジークフリートとブリュンヒルデの歌のかけあい。この部分ショルティ盤やベーム盤(要するにニルソン)では退屈で仕方がなかったです。(ベーム盤は演奏自体に勢いがあってまだよかったですが) しかし、このクナ盤で初めてこの部分に感動しました。世間一般ではワーグナー歌手としてニルソンの方が有名ですが、少なくともブリュンヒルデ役に関しては、ヴァルナイの方がニルソンより素晴らしいと思いましたよ。 クナの音楽の盛り上げ方も凄絶。遅いテンポでクレッシェンドしていく様は、どこまで上り詰めるのか気が遠くなりそうになるくらいスケールが大きいです。 最後の締めくくりも圧倒的で、ヴィントガッセンとヴァルナイの壮絶な二重唱の凄さ。それに続くコーダも、クナの遅めのテンポで、一歩一歩踏みしめるように叩き込まれる音に身を委ねる快感は他の演奏では味わえないです。 まあ、残念なのはステレオ録音ほどには、本当にこの凄さを実感することができないことでしょう。 どうしても脳内補完しないといけないところが多いのはしょうがないですね。 5.「神々の黄昏」 序幕のヴィントガッセンとヴァルナイの夫婦語りがよい感じです。 ゆったりとしたテンポでスケール感があってすばらしいです。ここは他のどの演奏よりもいいです。 また、グラインドルのハーゲンが凄い。ベーム盤のハーゲンでは衰えが見えたが、この盤では絶好調。 グラインドルの歌(声)そのものの貫禄にノックアウトされてしまいます。 なんて極道そうな男の声(笑)。でもすごくひきつけられる声です。 あんな声で「ホイホー」とか呼びつけられる場面が実際にあったら、本当に家から飛び出してしまうでしょう。とんでもない一大事が起こったみたいに思えるでしょうねえ。 6.まとめ クナの指揮を聴いて満足するかどうかは、うぐいすは聴く時の気分に左右されてるような気がします。 総じて遅めのテンポであまり細かいところは気にしないスケールの大きい演奏というところでしょうか。 手を抜いてるというか、全体通して聴くとちょっとムラみたいな部分もありますが。 時々、音がもどかしくって「多分こういう音で鳴っていたのでは?」と脳内補完してやる必要もあるのが残念です。 まあ、気分が高揚しているときはちょっと物足りなく思いますが、あんまり気分が前のめりじゃない時に聴くと逆に、クナの壮大な呼吸の演奏に身を委ねる感じになり感動して聴けます。 「ジークフリート」と「神々の黄昏」が特に凄かったです。「ワルキューレ」は第1幕が凄いが、それ以外の幕は気分によって個人的に評価が変りますね。 ヴァルナイの歌っているところもすばらしいですが、彼女自身の50年代前半の歌とくらべるとちょっと粘ってるので、そこをどう感じるかで変わるかもしれません。 録音自体は時としてもどかしいですが、やはりこのクナの演奏はワーグナーの本質を押えている演奏なんだろうと思います。 さて、次のPAは「<PA-005>クナッパーツブッシュ/バイロイト('56)」の予定です。 Wagner: Der Ring des Nibelungen
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久々の閑話休題:うぐいす兼好の徒然なるまま(苦笑)〜クナの指環〜
実に久しぶりにナンバーなしの雑談です。 これまた久しぶりに、ワーグナーの指環を飛ばし聴きしてます、時間もないのに(苦笑)。 突然、クナの指環を聴きたくなりまして。 ...続きを見る |
Cla_PA!(クラシックパーキングエリ... 2008/04/18 23:31 |
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